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【シリア】キリストと同じ言語を話す町「マアルーラ」

シリアは今も少数派ながら約10%のキリスト教徒を抱える国ですが、ここシリアには、キリストが話したアラム語のガリラヤ方言に最も近いとされている言語、西方アラム語を話す町が3つ残されています。そのうちの一つが今回ご紹介するマアルーラ(Maaloula)です。筆者は2019年2月にこの村を訪問しました。

 

町の由来「聖テクラ修道院」

聖テクラ修道院

 

マアルーラには、セレウコス朝の王家の血を引く一族のもとに生まれた聖テクラ(30年~1世紀末?)にまつわる伝承が伝わっています。彼女がキリスト教に改宗して自身の婚約を破棄したことを問題視した家族や婚約者らに追われる身となった彼女は故郷(現在のトルコ南東部)を離れシリアの山中へと逃亡しますが、ここにも追手が迫っていました。絶対絶命の状況に陥ったテクラでしたが、突如として彼女の目の前の山が開き、洞窟の入り口が現れるという奇跡が起こります。マアルーラに伝わる伝承では彼女は死ぬまでこの洞窟で過ごしたとされていますが、詳しいことは分かっていません。いずれにせよ、この伝承に基づくかたちでアラム語で「入り口」を意味するマアルーラという町名が付けられたのでした。彼女が過ごしたとされる洞窟には聖テクラ修道院が建てられ、今も多くの巡礼者を集めています。

 

最古級の修道院「聖サルキス修道院」

聖サルキス修道院の内部

 

伝承によるとローマ時代のゼウス神殿の跡地に4世紀に築かれたものとされており、世界最古級の修道院として知られています。ちなみに、現在のものは東ローマ皇帝のユスティニアヌス1世(在位:527~565年)によって建てられたものと伝えられています。この修道院の名物は、修道院のワイナリーで作られる「修道院ワイン」で、実際に試飲および購入も可能です。

 

内戦時の悲しい歴史を背負う町

破壊されたマリア像

 

マアルーラは、首都ダマスカスから車で約1時間ほどの位置にある町ですが、残念ながらここも内戦の舞台となってしまいました。アルカイダ系のヌスラ戦線が2013年9月に町を占拠、シリア政府軍とのあいだで激しい戦闘が勃発しました。一度はこれを撃退した政府軍でしたが、ヌスラ戦線は11月に再度マアルーラを襲撃し、聖テクラ修道院の修道士らを誘拐しました(のちに政府軍との人質交換により釈放)。2014年4月にヒズボラの支援を受けた政府軍により奪還されたときには、既に2つの修道院の内部は酷い有様だったようです。以後、修復作業が行われ、2018年には両修道院とも一般公開が再開しています。内戦前には多くの旅行者が訪れていたマアルーラ。内戦の悲しい歴史を乗り越え、ようやく旅行者が戻り始め、村にも活気が戻りつつあります。

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